交通事故の被害者になったときに知っておきたい、損害賠償請求の基礎知識

2020-06-30

交通事故の被害者になると、加害者に対して損害賠償請求を行うことができます。しかし、交通事故というのはそう頻繁に遭遇するものではないため、その仕組みなどをよく知らない人も多いでしょう。ですのでここでは、損害賠償や保険の種類・請求の流れ・賠償に適用される基準などの、損害賠償に関する基本的なことについて紹介します。

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損害賠償には4つの種類がある

交通事故で請求できる損害賠償は、積極損害・消極損害・慰謝料・物的損害の4種類に大きく分かれており、この4つを合計することで損害賠償請求の金額が決まるという仕組みになっています。「積極損害」は、交通事故によって実際に支出が必要になる損害のことで、治療費や葬儀費用などがこれに相当します。

「消極損害」は、交通事故によって本来得られるはずの利益を失ってしまうという損害であり、休業補償や後遺障害による逸失利益などがあると言えるでしょう。そして「慰謝料」は、精神的、または肉体的な苦痛に対する賠償金のことで、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3つがあります。

比較的軽微な事故のケースでは、慰謝料が損害賠償金のメインになることも多いと言えます。最後の「物的損害」とは、交通事故によって自動車や積載品などに受けた、文字通り物的な損害のことです。自動車の損害については、修理が不可能なほど壊れてしまった場合は、同等の車両の購入に必要な金額を請求できますが、修理が可能な場合は修理費用の請求になります。

また、被害者にケガなどがない物損事故の場合は、基本的に車の損傷に関する損害賠償のみとなるため、上で説明した慰謝料の請求はできません。

損害賠償で利用される自賠責保険と任意保険

交通事故の損害賠償は、加害者が加入している自動車保険によって賄われますが、その保険には自賠責保険と任意保険の2種類があります。まず「自賠責保険」は、自動車を運転する人すべてに義務付けられている保険であり、加入しないと公道を走ることができません。

自賠責の特徴としては、交通事故の被害者に対して最低限の救済をするという目的のものであることと、人身事故のときしか使えないということが挙げられます。ですので、物損事故では利用できませんし、人身事故のケースでも補償金額が任意保険より安くなってしまいます。

また自賠責は、任意保険と違って示談交渉は当事者同士で行わなければならないという不便さもあります。

一方の「任意保険」は、最低限の補償しかしない自賠責では賄いきれない部分をカバーするための保険、という位置づけになっていると言えるでしょう。加入は強制ではなく任意なのですが、もしものときの備えとして加入している人がほとんどです。

賠償金の支払いが行われるまでの流れ

まず、交通事故が発生したら、「警察と自動車保険会社に連絡」をする必要があります。そうすると保険会社によって事故の当事者それぞれに「聞き取り」が行われ、事故の状況や過失割合を調べたりします。そして聞き取りが済むと、被害者側と加害者側とで「示談交渉」が行われ、損害賠償をどうするかを協議することになるのですが、一般的には、加害者側の保険会社が条件を提示したあとに交渉が始まることになるでしょう。

被害者側がその条件を受け入れれば、そこで示談交渉は終わりますが、賠償金額に納得できない場合は増額を求めてさらに交渉が続きます。

示談交渉がまとまると、保険会社から示談完了の書類が送付されるので、それに署名して返送すると保険金支払いの処理が行われ、実際に「損害賠償金の支払い」がなされます。ただし保険会社から送られてくる示談完了の書類を返送すると、その後は賠償金額について争うことができなくなるため、返送する前に、本当に納得できる内容かどうかを慎重に考えることも必要です。

また、損害賠償の請求には時効があり、通常は事故発生から3年とされていますが、加害者不明(ひき逃げ)の場合は20年となっています。

→スクーターを運転していた私が交通事故の被害者になったときの体験談

損害賠償で適用される3つの基準

交通事故における損害賠償の金額は、同じ事故でもどの基準を適用するかによって大きく変わる場合があり、その基準には、自賠責基準・保険会社基準・裁判所基準の3つがあります。「自賠責基準」は、すべての人が強制加入させられる自賠責保険の保険支払いを基準にしたもので、最低限の補償しかなされないため、補償金額は3つの中で最も低くなるのが特徴です。

「保険会社基準」は、加害者が加入している保険会社の基準であり、各会社によって基準は異なるのですが、先ほどの自賠責よりは賠償金額が高くなるとされています。そして「裁判所基準」は、裁判所の過去の判例を元にした基準であり、3つの中で最も高い賠償金額を得ることが可能です。

ただし裁判所基準を適用してもらうためには、細かい計算や専門知識が必要になってくると言えます。これら3つの基準の中で、実際に一番多く適用されるのは保険会社基準になりますが、加害者が自賠責しか加入していない場合は自賠責基準になり、弁護士を雇う場合は裁判所基準になるのが一般的です。

どんな専門家に依頼したらいいのか

交通事故の損害賠償請求をするときは、自分一人で対応することに不安を感じたり、賠償金額に納得がいかない(増やしたい)と考えることも多いでしょう。そんなときは一人で悩まずに、弁護士や司法書士といった専門家に相談してみるとよいと言えます。

「弁護士」は、被害者に代わって示談交渉や裁判を行ってくれますし、賠償金の算出などもしてもらうことができます。そして、先ほども紹介したように、弁護士に依頼すれば賠償金額を最も高くできる裁判所基準の適用も可能になるということもメリットです。

もちろん、弁護士を雇うと安くない費用がかかりますが、弁護士を介入させることで賠償金額が倍以上になるケースもあるため、一度相談してみるとよいと言えます。「司法書士」については、訴訟額が比較的少ない140万円未満の交渉や裁判に限って依頼することが可能で、弁護士に依頼するよりも費用が安く済むのがメリットです。

しかし司法書士が関われるのは簡易裁判までなので、相手が控訴したことで地方裁判所に場所が移ってしまった場合は、新たに弁護士を依頼する必要が出てくるというデメリットもあります。また、これらの専門家に依頼する場合は、交通事故に強い弁護士や司法書士かどうかということを事前に調べておくことも重要です。

→交通事故の被害者が知っておきたい供述調書

知っておくべきことは案外多いので、不安なときは専門家へ相談するといい

交通事故の損害賠償には、積極損害・消極損害・慰謝料・物的損害の4種類があり、利用される保険には、自賠責保険と任意保険があります。損害賠償に適用される基準は、保険会社基準が最も多いと言われていますが、裁判所基準が適用されれば、より高い賠償額を得ることが可能です。

相談や依頼ができる専門家としては、弁護士や司法書士が挙げられます。